家庭菜園をしていると、自然の美しさに触れ合うことも多い。
ハイビスカスの花のようなオクラの花は午前の早い時間帯だけに咲く。花びらにも粘り気があり、食べることもできる。
落花生の黄色の花々も愛らしい。スイカやメロンの花もさわやかな黄色である。
草花に降りた朝露が光る様子にも、心が洗われる気がする。

朝露を見ると思い出す和歌がある。
「白玉か何ぞと人の問ひし時 露と答えて消えなましものを」
伊勢物語(第6段芥川)の一節である。私は40年以上高校で国語を教えており、今も私立高校で教鞭を執っている。古典作品の中で、この伊勢物語の芥川の巻は特に好きな物語の一つである。簡単にあらすじを言うと次のようなものだ。
「男が長年思いを寄せていた女を盗み出し逃避行に出る。途中の芥川のほとりで、草についた白露を見た女が「あれは白玉(真珠)でしょうか」と無邪気に尋ねるが、夜道を行く男は答える余裕もなく先を急ぐ。
やがて激しい雷雨となり、男は女を荒れ果てた蔵の奥に押し込め、弓矢を手に戸口で警護に当たった。しかし、その蔵に棲む鬼が夜のうちに女を一口で喰らってしまう。神の雷鳴にかき消され、女の悲鳴に気づけなかった男は、朝になり女が消えているのを知って足摺りをして泣き悲しんだ。」
伊勢物語にはこの後の記述で鬼の正体などが明かされているが、これは完全な蛇足だと言っているのは伝奇バイオレンス作家の夢枕獏氏である。私も夢枕先生の意見を全面的に支持したい。現実問題として古典の教科書でこの「芥川」を扱ったものは例外なく蛇足の部分は収録されていない。男が嘆き悲しんで歌を詠むところで物語は終えられている。
これも蛇足かもしれないが、この女は深窓の令嬢で葉に降りた露などは見たこともない。そのために男に問いかけたのであるが、夜露が真珠のように美しく光っているようすを感じ取った心情には考えさせられる。この女もおそらく、男との逃避行に心が弾んでいたのだろう。
ちなみに夢枕獏氏は私の大好きな作家のひとりで、この人の得意とする伝奇バイオレンスものはもちろんだが、特に私の好きな作品は「神々の山黎ちなみに夢枕獏氏は私の大好きな作家のひとりで、この人の得意とする伝奇バイオレンスものはもちろんだが、特に私の好きな作品は「神々の山嶺」である。

岡田准一や阿部寛などのキャストで映画化もされている。しかし、原作には及ばなかったと私は思っている。


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